第166章

稲垣栄作は医者に何度も質問していた。

彼は「高橋遥は考え直しましたか」と尋ねるたびに、医者はいつも「ありません」と答え、「稲垣奥さんは離婚の意志が固く、もうお会いしたくないとおっしゃっています」と伝えた。

そのたびに、稲垣栄作の心は落ち込むのだった。

あっという間に、新年を迎えることとなった。

大晦日の夜、稲垣栄作はわざわざ高橋遥のためにお菓子を作らせ、稲垣七海の写真も何枚か送った……

高橋遥は喜ぶだろうと思ったのだ。

この夜の年越しの食事は、例年通り稲垣家の実家で行われたが、今年は特に寂しかった。おばあさんが亡くなり、高橋遥もいない家……

しかし稲垣奥さんの機嫌は良さそうだっ...

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